Tips
住宅建築写真の基本的なRAW現像方法についてご紹介します(内観編)
この記事では住宅建築写真の、「玄関・階段・寝室・LDK」における基本的なRAW現像作業を、実際の作業画面と共にご紹介します。後編となる「住宅建築写真の基本現像(外観編)」は後日更新しますのでご覧いただけると幸いです。
RAWとは
デジタルカメラの記録形式には一般的なJPG形式の他にRAW形式というものがあります。RAWは「生の、料理していない」という意味なので、RAW形式で保存されたデータは、何の処理も行われていない生のデータということになります。生のデータは、明るさや、色の調整をある程度自由に行うことができるため、多くのカメラマンがこのRAW形式で写真を記録しています。
私たちもこのRAW形式で写真を記録し、様々な処理を行った後、皆様へお届けしています。
玄関
まずは玄関から。画面左側が「現像前の元データ」で、右側が「現像後のデータ」になります。撮影したカメラはSonyのα7RII。iso感度は「100」固定、F値(絞り)も「11」固定です。
まずは露光量スライダーで全体の明るさを調整しますが、胆になるのは「ハイライト」「シャドウ」「白レベル」「黒レベル」のスライダーです。明るいところと暗いところを個別に調整できるため、もともと明るいところはそのままに、暗いところだけを明るくすることもできます。それぞれ適宜調整を行うことでコントラストの高い写真に仕上がります。
今回の場合では、露光量スライダーを+0.50した後、ハイサイドライトと階段上から入る外光の眩しさを抑えるためにハイライトを-50し、それによって白がどんよりしてしまわないよう、白レベルを+20しています。シャドウは階段やそれよりも暗い部分の明るさを持ち上げるために+30、黒レベルはシャドウを持ち上げた部分がほわほわしてしまうのを抑えるために-10しています。
眩しさを抑え、暗く落ち込んでいる部分は持ち上げるという補正は基本のキになるかと思います。この後の調整でも共通する部分です。
階段(上り)
階段も考え方は玄関と変わらず、眩しいところは抑え、暗いところは持ち上げていきます。ちなみにシャドウを+して黒レベルを-にする調整は、木材の木目などを際立たせることができます。やりすぎるとギトギトとキツい印象になるので写真を見ながら調整していきます。
階段(下り)
下り方向の階段写真ですが、踏板の明るさは変化させずに周囲の壁部分のみ明るさを落としています。今回の場合はハイライト、シャドウの調整に加えて円で囲った所を部分的に補正する円形フィルターを使いました。窓も同様に、向こう側の景色が白く飛んでしまわないよう、円形フィルターで明るさを落とし、景色を復活させています。
寝室
続いて寝室です。ペンダントライトなどを空間の中に写しこむと、内部のディテールが真っ白になってしまいがちなので、部分的に円形フィルターなどで明るさを抑えます。また、自然光、照明光ともにどこに光が当たっているかを意識しながら調整するといいかもしれません。筆のように使えるブラシツールで、光の当たっている部分をなぞるように少しだけ明るさを足してあげると立体感が増します。
LDK
最後にLDKです。様々な要素が一堂に会する場ですが、調整自体はこれまでと変わらず以下の手順で作業を行っていきます。
-
- 露光量スライダーで全体の明るさを整え
- ハイライト、シャドウ、白レベル、黒レベルのスライダーで、明度ごとの明るさを調整
- (2)で足りなければ、円形フィルターなどの部分補正で調整
この写真では全体の明るさを整えた時に、右下のフローリングの照り返しが強すぎる印象でしたので、その部分を円形フィルターで抑えています。どこをどの程度補正するのかという点に関しては、最終的には個人の好みになりますが、イエフォトとしてはクセのないニュートラルな点を目指しています。
以上、住宅建築写真の基本現像(内観編)でした。ハイライトを-して白レベルを+、シャドウを+して黒レベルを-にする補正の形は、様々なシーンで使うことができます。RAWで撮ってみたけど補正がうまくいかない...とお悩みの方は一度試してみてはいかがでしょうか。写真の現像、調整でお悩みの方の参考になれば幸いです。