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住宅建築撮影におけるカメラのアングルとポジションの取り方
撮影写真を納品すると「やっぱり自分で撮る写真と全然違いますね!」とお褒め頂きます。一筋に建築写真のみを撮影しているので当然のことですが、そう言って頂けると非常に嬉しいものです。一方で「機材が違うからですかね?」と言う悪魔の一言が付いてきます(笑)。一理ありますので「そうですね」と笑顔で応えますが、心の中では泣いております。
さておき、前回の記事では「住宅建築の外観と内観の撮影方法」をご紹介しました。今回は、さらに掘り下げカメラアングルとポジションの取り方についてご紹介したいと思います。
経験学習によるセミオーダー撮影
写真家はセンスだ!感覚だ!と怒られそうですが、敢えて住宅建築写真は「セミオーダー」と言わせて頂きます。その理由は、極端なスケールの家を除き、ここ日本で建つ家は「厳しい建築基準の中での設計やデザイン」であるからです。大分類でのカテゴライズとしては過去2000棟の住宅撮影経験からの引き出しです。しかしデザインや間取り、色や材など無限の組み合わせとなるのが住宅建築の面白いところだと思います。伴い、撮影をする際もそれぞれにカスタムしていかなければならないため「セミオーダー」という言葉を使っています。
アングルとポジションの組み合わせ
前回記事でも「アングル」という言葉を使いましたが、これはお客様が良く使う言葉なのでそのように記載しましたが、正確には少し違います。 アングルは被写体から見てカメラが「水平」か「上」か「下」かなので、不動産広告、高層マンション、俯瞰撮影をする時以外は、ほぼ水平アングルしかありません。
住宅建築撮影で重要なのは「ポジション」の方です。ポジションは「アイレベル(イエフォトのアイレベルは150cm~160cmの女性平均を取り決め)」、「ハイ」、「ロー」があります。伴い、組み合わせとしては水平アングル+ポジション+特殊機材=イエフォトと言えます。あながち「機材が違うからですかね?」というのは間違ってはいないわけです。それでは撮影事例を用いてご紹介したいと思います。
素直なアイレベルからの水平アングル
アイレベルから真っすぐ撮ることで素直に空間の良さを表現します。ここで注目してもらいたいのは「四隅の始まり方」です。右下はサッシを、左下は棚をそれぞれ均等なマージンから始まっています。上部左右も同じです。この細かなカメラポジションこそが住宅建築における写真の醍醐味です。
アイレベルからのやや上シフト
アイレベルから真っすぐ撮影していますが、やや上にシフトすることで左上(サッシ)の在り方や右上(空間)との位置関係を明確に表現できますし、わずかに見える梁の様子もまた想像力を掻き立ててくれます。すべての面の要素をカバーできる写真だと思います。
ローポジションからの上シフト
この写真もアイレベルから撮影しても良かったのですが、合えてローポジションから上へシフト行うことで、板張り天井の目地や風合いを強調することができ、すっきり伸びていく空間を演出できます。
アイレベルからの対角線
採光計画が綿密に行われてるがゆえの写真です。素直にアイレベルから上下左右に均等にポジションし、光の対角線を意識するだけで印象的な写真となります。
アイレベルから建築線種を楽しむ
階段に向かう導線ですが、壁面や吹き抜け、収納棚やキッチンなどさまざまな線種をお借りすると印象的な写真となります。
アイレベルからのやや左シフト
カメラは通路の真ん中に構えていますが、視点を奥の空間に向けるために左シフトし撮影を行っています。人の導線と視点方向を両立した写真となります。
続いて家具・照明が入った状態での撮影となります。イエフォトでは伽藍洞と家具ありでは細かな点で撮影方法を変えているのも特徴です。家具あり(ステージング撮影)についてはまた別の記事でご紹介します。
アイレベルからの撮影
撮影ポイントは坪庭から入り込む柔らかい光と綺麗な漆塗りの床の表情でした。後にお客様のWebサイトにアップされたタイトルが「坪庭を囲む静寂に包まれた漆の家」でしたので、ほぼ意図する通りのアングルとポジションであったと思います。
ハイポジションからの下シフト
ハイポジションから撮影行うことで手前の照明の形状が乱れません。高さを間違えると超広角レンズでは手前のモノが大きく変形してしまい恥ずかしい写真となります。このあたりの撮影メソッドもチームで共有しています。また、ハイポジションから下シフトすることで床面が隠れることなく見せることもできます。
ローポジションから上シフト
アイレベルからの撮影でも良いのですが、この家の魅力は勾配天井による圧倒的な解放感と素材美ですので ローポジション(100cm位)から上シフトすることで座りの良い写真となり、かつ建物の特徴を良く捉えた写真であると思います。
これまでの撮影経験から上記のような細かなアングルやポジションの引き出しがあること、それらをチームで共有していることが私たちの強みでもあります。冒頭申し上げた「セミオーダー」と言うのは、住宅建築を撮影する際の基本は共通だが、空間の間取りやデザインは無限であり、それぞれにカスタムした撮影を行うという 意味であることをご理解頂ければ幸いに思います。
次回は、住宅建築の外観撮影についてご紹介したいと思います。