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FUJIFILM GFX50Sは本当に建築写真に使えるのか?実機レビュー
※GFX50SⅡのレビューを公開しました!「GFX50SⅡ実機レビュー|GFX50Sからの進化」
2017年2月に発売となった中判ミラーレス「FUJIFILM GFX 50S」。早速イエフォトとして1台購入し実機テストを行いましたのでご紹介します。中判サイズの導入はこれで2機種目、一台目は「PENTAX 645Z」、ニュートラルな色調と圧倒的な解像力は申し分なかったのですが、重量(HD PENTAX-DA645 28-45mmF4.5ED AW SR装着時)とサイズを考えると機動性に欠けるため実用を断念せざるを得なかったので、今回はかなり期待大!となります。
そもそも「中判」って何?
「中判」といってもあまり馴染みが無いかもしれませんが、カメラのセンサー(撮像素子)の大きさ、つまりフィルムでいうところのフィルムサイズ、感光面に当る部分、その大きさを示す言葉のひとつとして「中判」というものがあります。
一般家庭に普及しているクラスのカメラのセンサーサイズが「APS-C」、報道や人物写真のプロカメラマンが主に用いる一眼レフカメラのセンサーが「35mm判フルサイズ」といって、これに対し中判のセンサーはさらに大きく、フルサイズ比1.7倍、APS-C比で実に4倍もの大きさになります。
「中」判といっても中くらいのクラスという意味ではなく、デジタルにおいては大判の実用的なカメラは現時点でまだ登場しておりませんので、デジタルでは最大級のセンサーサイズということになります。広いダイナミックレンジ、緻密な描写、際立つ立体感、豊かな諧調、どの部分を取ってもAPS-C機の比ではありません。
広いダイナミックレンジ
GFXを実際に建築撮影に使用し、まず印象的だったのが「ダイナミックレンジの広さ」です。図1-Aで示した写真は撮影時点では、扉の部分が黒潰れして見えていませんが、これを現像した写真が図1-Bになります。ほぼ全く見えなかった状態から、手すりが浮かび上がってきたのがお分かり頂けると思います。これだけの解像度を保ったまま暗部を持ち上げることが出来るのは、GFXのような中判カメラがもつダイナミックレンジの広さがあってこそとなります。
被写界深度の深さ
被写界深度というとあまり耳馴染みが無いかもしれませんが、「ピントの合っている範囲」と捉えて頂ければ概ね問題無いかと存じます。写真ポイントの2から3までは凡そ5mほどの距離がありますが、どちらにもほぼピントが合っています。このようなことは35mm判でも可能ではありますが、35mm判以下のカメラで絞りをF16や18に設定(絞り込んで一度に入ってくる光の量を減らす)しますと、レンズの回折という現象が起きてしまい、パンフォーカスにしようと思ったのに却って画面全体がボヤけてしまうという本末転倒の状態になってしまいます。これを回避しながらパンフォーカスを実現するには大判や中判でないと難しいということになり、パンフォーカスが大変有用な場面が多い建築撮影においては、大きなアドバンテージになってきます。
建築写真で使用するレンズとの相性
純正レンズ及び建築写真で使用するシフトレンズを実際に装着しテストしてみましたのでご紹介します。使用したレンズはFUJINON GF23mm(純正)とCANON TSレンズ2本、Nikon PC-Eレンズ1本となります。
FUJINON GF23mmF4 R LM WR(純正レンズ)
純正レンズとしてはGF23mmF4(35mm判換算18mm)の超広角レンズをラインナップしています。歪みはほとんど無く、高い諧調表現と四隅までシャープに描写します。レンズの広角域における数ミリの差というのは非常に大きく、このレンズがあるというだけで撮影可能な場面が格段に広がったと言えます(ほとんどの戸建住宅はこのレンズで対応できます)。
CANON(TS-E24mm/17mm)/ NIKON(PC-E 24mm)
意外と知られていませんが建築撮影によく使用されるニコンやキヤノンのシフトレンズ。これらのイメージサークルはアオリを可能にするために大判レンズ並みの広大なイメージサークルを備えており、このイメージサークルの広さは中判カメラに装着して撮影した際にもかなりの量のアオリを可能とします。両メーカーとも若干の補正は必要としますが、実用レベルのレンズと言えます。
GFX50Sは建築写真に適したカメラなのか?
GFXを作っている会社は富士フィルムという、もともとはフィルムの製造・販売を主に行っていた会社です。プロカメラマンなのに、ニコンやキヤノンのカメラは使わないの?と思われる方も多いかもしれませんが、意外なことにニコンやキヤノンは現時点でまだ中判カメラを製造しておりません。
他に国内で中判デジタルカメラを出しているメーカーはリコー(旧ペンタックス)があり、また海外ではデンマークのフェーズワン、スウェーデンのハッセルブラッド、イスラエルのリーフ社などが主流です。
その中でも富士フィルムはサポート体制が非常に充実しており、防塵防滴で堅牢性もあり、しかも物理的なシャッターを採用しないミラーレス機と滅多に壊れない構造(が、センサーはとても汚れやすいですが!)になっている為、撮影時におけるリスクを大幅に減らすことが出来、「すべてがロケ撮影で行われ失敗の許されない建築撮影」において大きなメリットとなっています。
また、中判カメラに35mm判フルサイズ用のレンズ装着を可能とするようなシステムはほぼ無く、私どもの知る限りではカパウル&ヴェバー社のALPA12FPSとGFX位のものです。GFXのような中判カメラとシフトレンズの組み合わせはまだ珍しく、これ以上無い程に建築撮影に最適の組み合わせと言えるでしょう。
最後に、画質面の性能以外にも操作性・レスポンス・インターフェースなど、従来の中判の常識を覆すような使いまわしの良さも備えており、素早く的確に撮る必要のある夜景撮影時などに威力を発揮します。総じて、建築写真に適した中判デジタルカメラだと考え採用いたします。
追伸:2019年1月時点でGFX50Sは3台稼働しています。